受験勉強 ≪実技編≫
実技試験対策は、私などが申し上げる間でもなく「実践あるのみ」かと。
ですので、こちらで再度、過去の実技試験内容を復唱します。
※ここに掲載しているのは、あくまで「過去問」です。
最新の試験とは内容が異なる可能性が十分あります。
受験の際には必ず「当年度の測定項目と要求事項」に従ってください!!
<実技試験(過去問ver.)>
・アナログ水晶腕時計(バンド付き)の裏ぶたの開閉
・裏ぶたパッキンの交換
・電池の選択
・電池セット
・電池電圧・歩度測定
・バンドの取外し・取付け
・バンドのこま詰め
・時刻合わせ
・カレンダー合わせ
・包装
この要求事項から、
・裏ぶたの開閉 → スクリュー式裏ぶた
・バンドのこま詰め → 板ばね方式のメタルバンド
・時刻合せ → 中3針
・カレンダー合わせ → 日・曜カレンダー付
という時計の姿が浮かぶと思います。
※参考までに、平成24年度の実技試験で課題に出された時計は「セ●コー」のキャリバー「●N43」でした。
ではもう少し突っ込んで、仕様(要求事項)の詳細を。
<測定項目(過去問ver.)>
・歩度 (秒/日)
・電池電圧 (V(ボルト))
・消費電流 (μA(マイクロアンペア))
・電池寿命算出 (年)
・1か月当たりの遅れ又は進み算出 (秒/月)
<要求事項(過去問ver.)>
・バンド取外し → 時計本体からバンドを取り外す
・バンド取付け → 三つ折れの喰付部が6時側になる状態にする
・裏ぶたパッキンの取外し
・電池の取外し
・バンドのこま詰め → バンドの12時側を1こま、6時側を1こま取り外し、短く調整する
(外したこまと板ばねは、一列に組み立てる)
・バンドの長さ微調整 → 12時側の中留ばね棒を、バンドが最も短くなる方向にずらす
・提出時の裏ぶた → 本締め (指サックをした指でゆるまないこと)
・時刻・カレンダーセット → 時、分、秒、日、曜日を試験場の基準時計に合わせる
・包装 → 化粧箱を支給用紙で斜め包みする
(化粧箱サイズ 約15×5×2cm 支給用紙 B4 ※用紙はカットして使用可)
≪測定項目の補足≫
「電池寿命の算出」には、簡単な計算式が要ります。
※電池容量は、試験会場で当日公表されます。
電池寿命(時間)=電池容量÷消費電流
<計算例>
・SR920SWの電池を使用し、その電池容量が39mAh(ミリアンペアアワー)
・消費電流測定器で測定した消費電流値が0.95μA(マイクロアンペア)だった
と仮定して算出します。
まず、電池容量。
1mA=1000μAなので、電池容量値を、消費電流値と同じμAの単位に合わせます。
39mAh×1000=39000μAh
式に当てはめると、
39000μAh÷0.95μA=41052.631578947時間
↓
41052.63158947÷24(時間)=1710.5263157894日
↓
1710.5263157894÷365(日)=4.6863734679161年
管理人、小心者ですので桁数を鬼のように多く明記していますが……。
要は「小数点以下第2位以降を切り捨てたら、電池の寿命は4.6年」ということです。
(※1年=365日・自己放電は無視 で計算しています)
《実技編》の測定項目 1
《歩度》
歩度とは、
「短時間の誤差から推定した日差・月差・年差等の進み遅れの誤差」
を指します。
時計には必ず進み遅れの誤差が生じるものですが、お手持ちに専用機器が無い状態で日差を調べようと思ったら、丸1日待たなければいけません。
(もちろん1日待てば、おのずと正確な誤差は判定できます)
しかし、仕事として時計を修理・調整する時には、丸1日時間をかけられないことが多く、短時間で日差を求める必要が生じます。
こんな時使われる、超お役立ち機器が「歩度測定器」。
「歩度測定器」は、例えば10秒間の時計の誤差を測定し、これを8640倍(※)して、日差として表示してくれます。
(※ 1日=86400秒 → 10秒間での測定なら、必然的に÷10 の8640倍)
1s×10(秒)=10s(秒)
10s(秒)×6(分算出)=60s(秒) → 60s(秒)=1m(分)
60s(秒)×60(時間算出)=3600s(秒) → 3600s(秒)=60m(分)=1h(時間)
3600s(秒)×24(日算出)=86400s(秒) → 86400s(秒)=24h(時間)=1d(日)
《1か月当たりの遅れ又は進み算出》
……上記の「歩度測定器」で測定or算出した日差が分かれば、この数値を元に「1か月の遅れ又は進み」は、ばっちり算出できるはず!
1か月=月によりますが、平均して、およそ30日。
ということは……?
(※ 1か月を何日で算出するかは、各指示に従ってくださいね!)
《電池電圧の測定方法》
電池電圧は、お手持ちのデジタル式回路計等で測定可能です。
※単位=V(ボルト)
……それでは、管理人の手持ち回路計で実践してみましょう。
モデルの回路計は、A&D のテスター AD-5529 。
(お手軽&使いやすくて重宝 時計工具.com様でも購入できます)
参考までに、今回の測定電池はSR936SW。
(特に意味はございませんので、深読み不要です)
@ テストリードを、赤黒それぞれ、所定の位置に差し込みます
(この機種は、赤=中央 黒=正面向かって右端)
A 中央のつまみを、1.5Vの位置に合わせます
B そして、リードの先端を電池にタッチ!
(※ 赤=+ 黒=−)
C 液晶に、電池電圧が表示されます
0.02V……残念ながら、瀕死の電池でございました()
《実技編》の測定項目 2
《試験で使用する測定器》
まずはこちらの測定器をご紹介するにあたり、大阪の実技試験に携わる諸先生方のご厚意に深く感謝致します。
(生憎管理人は関西方面でしか面識がございませんが、時計に携わって出会う方々は、例外なく温かいお人柄ばかり。本当に恵まれた環境です……)
ご多忙な中、失礼ではないかと恐る恐る紹介の旨申し出たところ、びっくりする程のご快諾で管理人大感激。
未来の時計修理技能士様達の為に、快くお力添えしてくださったお気持ちを生涯忘れないよう、感謝と敬意を込めて、ここに記させて頂きます。
試験勉強時、環境に少々恵まれなかった管理人が最も苦戦したのが、「消費電流の測定方法」と「時計の歩度の測定方法」。
何しろ、試験会場で出会うであろう測定器の全容が分からないことには、迂闊に受験に踏み切りにくい。
(「けもの道」の名に恥じぬ様、紆余曲折の挙句に踏み切っとりますが)
試験の際、この2点の測定に使用するのは、世界最高位のタイムグラファーのメーカー Witschi(ウィッチ)社の測定器 “Q-TEST 6000”。
スイス製。
時計修理技能士の試験に使用されるのは、実はこの測定器と規定で決められているそうです。
ちなみに、お値段は1台約70万円。
受験者様には、くれぐれも取り扱いにご注意くださいますよう平にお願いいたします……。
……台数を充実させるため、中には白衣の諸先生方の私物である測定器も混ざっています!!
さりげなく高額機器なので、壊れたら相当しょんぼりされると思われます。
しかし金額より何より、精密機器が破壊されるショック度合いは、時計修理の知識に興味をお持ちの方々なら、痛い程お分かりになりますよね……。
こちらが、測定器 “Q-TEST 6000”。(※写真は、傷防止のビニールカバー付)
これ1台で、消費電流も歩度も同時に測定できます!
他にも電池容量や電圧測定もできてしまうスグレモノなのですが、他計測は試験要項に入っていませんので、泣く泣く詳細を割愛。
(※右中央 金色の丸いトレイが電池の測定箇所 & 他項目測定の際、上部の赤黒に同色のリードを付けて使用します)
上のデジタル部分3ヶ所には、この数値が表示されます。
(※下のボタンとつまみで、他の計測や秒数等がセレクトできます)
実際に時計をセットした状態が、こちら。
もう少し寄ってみましょう。
(※セッティングは、測定者側から見て、リューズが向こう側の位置になります)
右端の電源を入れ、赤黒のカギ状の先端を、それぞれ所定の位置に触れます。
(黒は要微調整! 赤の先端は、上部金属部品のどこかであれば比較的OK)
※この先端、昆虫の触覚部分に匹敵する超デリケート部品です!!たわみが生じますので、手前の先端や中央の水平部分ではなく、必ず奥側の垂直部分で高さ調整を行ってください。
当日の試験会場でも、機器操作の手順は、試験開始前にきちんとご伝授くださいます。
(ひとくちに測定器と申しましても、メーカーや機種は様々ですから)
基礎知識や、測定後の数値から必要事項を算出する方法さえ正しく把握していれば、安心して試験に臨むことができます。
受験生の皆様。
もしも設定や時計の計測箇所に迷ったら、会場で遠慮なく白衣の諸先生方にお尋ねくださいね。
どなたも本当に優しく丁寧に教えてくださいます(嬉)